コリアンの本音
謝罪・・・・どう実行するかが問題
森
「本来、自分達の手で明らかにしてなければならないんですが、教科書問題と同じように、今回も韓国
大統領の訪日を機に、過去の植民地支配への謝罪がクローズアップされたわけです。」
金
「僕は正直言って、今回の「謝罪」問題にほとんど興味がありませんでした。天皇の「お言葉」報道は盛
んでしたが、何故謝罪するのかを説明して欲しかったですね。植民地支配の歴史を知らない世代にし
てみると、日本の象徴が謝るんだから大変な事だ、ぐらいのイメージしか持てなかったんじゃないです
か。」
康
「謝罪」その物は信用していません。問題はそれをどう実行するかでしょう。日本社会の官僚的な体質
が反省するシステムになってない。それと、今回僕が思ったのは、僕ら在日の存在は日韓・日朝の「友
好」の間にあるという事です。両国の関係がギクシャクするとそのつけは僕ら在日の上にかかってくる
んです。そういう危機感みたいのものを感じます。」
金
「パチンコ疑惑」や大韓航空事件の時なんか、在日韓国・朝鮮人への嫌がらせが酷かったよね。」
康
「今回もヒロシマの被爆韓国人慰霊碑への放火や、愛知の韓国居留民段への火炎瓶事件が起きてい
ます。」
森
「問題は一部右翼の事として片付けられない所にある。それを心情的に支えるような部分が日本社会
にあるとこです。それは、歴氏に対する無知・無自覚にもとづいているわけで、僕らがお二人の協力を
得て今回この冊子を作ったのも、そこを何とかしたいと思ったからです。」
金
「そうですね。これから「謝罪」に中身をどう肉付けするか、お手並み拝見というところですね。」
一人の人間には一つの名前しかない
森
「御二人とも本名を名乗っていますが、それが極自然の状態だとおもうのですが・・・・。」
金
「僕が本名を使い始めたのは、大学を卒業して韓国系の旅行会社に就職した頃で、一方では、日本の
友人との間では通名を使っていました。本名を使うときは気持が楽だなと思う反面、両方を使い分ける
事で自分が分裂するようなしんどさも感じました。
それが26歳で本名一本にしたのは、行政差別撤廃運動にかかわりだしたからです。本名を使い出し
てから父母がどんな経緯で日本に来て、どんな暮らしをしてきたかという事に目が向く当になりました。
さらに、在日韓国・朝鮮人の歴史を知りたくなり、植民地支配の問題にぶつかったわけです。」
康
「僕は高校を出て、韓国の大学へ行ったわけですが、当たり前ですが、韓国では回りが皆韓国名。そ
れが極自然なわけで、その時から本名です。」
森
「御二人とも、子供達は本名ですね。」
金
「一人の人間には一つしか名前が無い。それがその子の名前ですから。」
康
「ですが、本名を名乗る事で、子供何気ない言葉で、自分の子が傷つくということはありました。」
金
「今まで子供が辛さを訴えたような事は無いけれど、"お前は何人だ"と言われて、とうせんぼされたような
事があったようです。
子供は何も知らないのに、親が偏見を植え付ける事が多いんですよね。でもなあ家の子はのびのび
と育っています。
本名を使う事は、自分が韓国・朝鮮人だという意識がこめられているんだけど、本名はスタートであっ
て、全てではないと思います。つまり、本名を名乗る事から、自分達の言葉や歴史・文化などを培う事
が大切なんですね。」
諮問捺印を何故拒否したのか
森
「諮問捺印もやはり日本の侵略に原点があります。偽「満州国」で始まった諮問捺印は、中国民族支配
のための治安対策としてありました。」
金
「自分もはじめて指紋を押した時は、犯罪者扱いをされているようで、とても嫌な気持でした。其の後諦
めて押していたんですが、そういう自分を立ちきる必要あると思い、拒否をしたんです。"私は韓国人で
す。静岡のここに生きています"という表現のつもりでした。」
康
「指紋を押す事で、日本に隷属されるという屈辱感がありました。」
金
「指紋が碓一、本人の証明になるというけど、何億円もの不動産売買に必要な印鑑証明でも、写真さえ
も必要ないんです。又、警官が外国人登録証の提示を求める時本人の指紋と照合する事は無いし、ま
た、出来ないんです。ですから、これは何の意味も無い制度なんです。」
康
「日本政府は、今回の韓国との協議で、14、5年先には指紋捺印をなくすといっているが、それなら今
すぐにやめれば良いでしょう。警察治安県警社が摘発に反対している事を見ても、在日韓国人・朝鮮
人を治安の管理の対象と見ている事が分ります。」
金
「外国人登録証の常時携帯も大きな問題です。例えば、自動車の免許証の提示を求められた時、外国
人登録証を持っていないと不携帯で罰せられることがあり。免許証には住所も国籍も書いてあるし、交通
の取締りですから免許証だけで十分なのに、別件でやられてしまうんです。」
康
「そういったことを外国人にだけやらせているのは、世界で日本だけだといわれています。
"日本にいる限りに日本の法律に従え"という言い方もありますが、その法律を決める時点で僕ら
は参加できないんです。僕らには参政権が無いんですから・・・・。」
国籍条項の撤廃と参政権を求める
森
「今、参政権がないという話がありましたが・・・・。」
康
「所得税も県・市民税もまったく日本人と同じように納めています。義務は100%果たしているのに権利
がない。参政権の中でも、僕達定住外国人には選挙権がない。僕達の生活に直接関わりのある地方
自治への選挙権は、とりあえず保障されるべきだと思いますね。」
森
「ペルーの大統領に当選した、日系二世のフジモリ氏の場合とは、大変な違いですね。」
金
「それと、国籍条項による就職差別があります。公務委員や教員などは外国籍という事で、排除される
場合が多いんですが、それが民間企業の就職差別にも大きな影響を及ぼしているのが現実です。」
森
「僕は、日本の学校でも在日韓国人教師なんかが居た方が、授業がより豊かになるし、視野も広がると
思います。日本人の為にも必要な事だと思いますが。」
康
「そうすることで、具体的な国際化が図れるし、お互いに異質なものから学ぶ事も出来ますね。」
金
「人権という点では、まだまだ未解決な問題が多い。今一度、我々も「在日」の歴史的原点を踏まえて、
日本社会に参加する主体性を築かなければならないと思います。」
違いを認め合い共存できる教育を
森
「僕も学校の現場にいて思うのですが、学校は社会の縮図のような所がある。教師も生徒も個性が潰
され、皆ノッペラボーにされてる。」
金
「嘗て民族学校が閉鎖されて現在多くの子供達は日本の学校へ行かざるをえない状況にあって、そう
すると、韓国・朝鮮人としての自覚は生まれにくい。だから、民族学校を増やすと共に、日本の学校でも
民族教育を保障するカリキュラムが必要だと思いますね。例えば、大阪でやっている民族学級のような
ものを作る事ができます。」
康
「やっぱり、お互いに違うんだ、その違いを認め合って共存できる教育ですね。
例えば、「我国」といったとき、「日本」しか考えられていない。授業の中で、音楽で朝鮮の歌をやると
か。国語では朝鮮の文学作品を紹介するとか、家庭科などでも朝鮮料理を作るとか、いろんな教科
で工夫が着きるでしょ。」
森
「今お二人が言われたことは、多いに日本人のためにもなる。異文化と日常的に接する事で偏見や差
別を取り払う事が出来ます。
ところで、学習指導要領が改められて、「日の丸・君が代」の強制が始まったのですが、これこそ異質
な物を排除する日本人の体質を増幅させる事になる。国社社会には通用しないと思いますよ。げんに
日本の学校に在日定住外国人が通っているわけですから。」
康
「そう言えばある在日の子が、学校ではじめて「君が代」を歌わされて"気持が悪くなった"と訴えたそう
です。」
金
「僕も小学校の時、「日の丸・君が代」をやると、その場にい辛い感情を持ったことを覚えています。親
から時に教えたれたわけじゃないんですが、「日の丸」を見上げる事も「君が代」を歌う事もできなかった
という経験があります。」
森
「日の丸・君が代」は、単なる、「国旗・国歌」と違って、過去の侵略と深く関わっているのもです。まさ
に。過去を清算しない象徴といえます。それを残している以上、日本は国際性を持ちえないと思います
ね。」
歴史の精算から未来へ向けて
森
「今話してきて事を一つ一つ解決する事が、「謝罪」の中身だと思いますね。
それと共に、植民地支配の直接の被害者に対する保障をする事が大切です。ところが、日本政府は
「日韓条約で全て解決済み」という姿勢を崩していません」
金
「強制連行の名簿提出も、日本政府が熱心でないのは、そのあたりに原因あるんじゃないですか。」
康
「日本兵として重用された朝鮮人、従軍慰安婦、ヒロシマ・ナガサキの被爆朝鮮人などの実態をさえ調
査されていませんね」
森
「ドイツのナチス犯罪に対する責任の取り方は見事ですが、アメリカやカナダですら日系人の強制収容
について謝罪し、一人あたり200万円以上の保障をしています。」
康
「これも重大な問題ですが、日本人の戦争犠牲者に支払われている保障が、在日韓国・朝鮮人の場
合、やはり国籍条項を盾に一切ないんです。そういうことを考えると、日本政府の「謝罪」は実に虚し
い・・・・。」
森
「そうですね、やはり、僕たち市民の力を大きくする以外にないんですね。」
金
「日本の戦争責任を追及する場合、僕らの中にも既に、「過去」とは「無縁」に育っている若者達が居
ます。僕達二世が、植民地支配の体験者である一世と次の世代の三世・四世との橋渡しの役割をしなけ
ればならないと痛感しています」
森
「それは、僕の世代も同じなんですよ。例えば、このあいだの強制連行の名簿発掘にしても、僕らの世
代の市民の力によって行われている。今回の「謝罪」問題をきっかけに、こういう動きが生まれてきた事
を大切にして、さらに、過去を清算して未来に繋げるものにしたい。そうする事で、相互の信頼と友情を
築きたいですね。こく小冊子が其の為の一助になれば、とても幸いです。
金さん、康さん子の仕事が出来たことを、本当に嬉しく思っています。どうもありがとうございました。」